(イ) 94年におけるノルウェーの内政及び外交上の最大の案件はEU加盟であった。92年11月、政府はEU及びWEUに加盟することにより政治・安全保障上の立場が維持強化されるとの観点からEUへの加盟申請を行い、93年5月より加盟交渉を開始し、交渉では、農業、漁業等の分野で交渉が難航したものの、ノルウェー政府が重視していた資源の管理、主権の確保、地域経済の維持・振興確保について概ね目標は達成された。 (ロ) しかしながら、国民投票では、賛成47.8%、反対52.2%と加盟反対が多数となり、この結果を受け、ブルントラント首相はEU加盟を議会に正式提案することを取り止める旨表明した。反対派が多数を制した理由としては、?主権・裁量権の喪失に対する危惧、?福祉面での水準低下、失業の増大に対する女性、年金生活者、労働者層の不安、?農業への打撃、漁業権侵害に対する地方の根強い懸念、?国民の多数が安定した現状に満足しており、EU加盟に伴う不明確な変化よりも現状維持を選択したこと等が指摘されている。 (3) 外交・安全保障政策 (イ) ノルウェーは1949年のNATO設立以来加盟しており、安全保障の基軸はNATOに置いている。同時に北部において196キロにわたり国境を接するロシアとの関係を考慮し、平時においては外国軍隊の駐留、核兵器の国内持ち込みは認めないとの立場を堅持している。 (ロ) ロシアとの関係では、このような軍事安全保障面での多角的な体制を維持強化するとともに、二国間、多国間施策を通じても可能な限り実際的な関係を進める方針をとっている。 (ハ) 政府はEU加盟国民投票否決を受け、対外関係について、ダメージを最小限に食い止めるべく、EUとの政策調整・関係緊密化に努めるとともに、米・アジアとの関係拡大を重視している。 (ニ) ノルウェーは国連協力を外交の柱の一つに据えている。ブルントラント首相は、国連の要請に基づき「世界環境開発委員会(ブルトラント委員会)」(83〜87年)の委員長を務め、1992年の国連環境開発会議(UNCED)の開催実現に際しても大きな役割を果たし、世界の環境問題の第一人者としてこの分野では幅広い活躍を行っている。 また、国際紛争の調停の分野で、パレスチナの暫定自治合意(いわゆるオスロ合意)の成立や対パレスチナ支援やボスニア難民支援でも積極的な対応を取っており、人道援助大国として知られている。 3 経済 (1) 概況 戦後暫くは欧州の中でも貧しい国であったが、本格的生産を開始した石油部門の急速な進展に支えられ概ね順調な経済成長を遂げ現在は近年の景気低迷からも確実に回復し、GDP成長率は94年5.1%、95年3.7%となるなど力強く成長しており、引き続き良好な経済成長の見通しである。また、国家財政も、近年、財政赤字幅を急速に縮小しており、96年からは大
前ページ 目次へ 次ページ
|
|